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サステナビリティ情報開示実務1

サステナビリティ情報開示と言っても、何を開示すべきか判断に困るかもしれません。また、すでにあるCSRレポートや統合報告書を改善を考えているかもしれません。会社のサステナビリティの取組みは社会道徳にフォーカスしすぎて、合理的な投資家の関心事ではないかもしれません。ステークホルダーが誰にしろ実務者が常に考えることは会社にとって何が重要なサステナビリティ課題で情報開示の対象にするべきか考えてみてください。と言っても、手続きのイメージがわかないと思いますので、サステナビリティ会計審議会が開示基準を作成する際に使っている手続きを参考にしてみましょう。SASBは環境(Environment)、社会資本(Social Capital)、人材(Human Capital)、ビジネスモデル・イノベーション(Business Model & Innovation)、リーダーシップ・ガバナンス(Leadership & Governance)の5つの側面からサステナビリティ課題を探していきます。サステナビリティ課題の情報源としては、有価証券報告書、同業他社のCSR・統合報告書、業界誌、メディアニュース、アカデミックリサーチ、アナリストのレポートなどなどがあります。また、社内アンケート調査も情報源になるかと思います。網羅的に幅広く情報収集してください。そして、それらの課題が会社にとって利害があるのか?を考えてみてください。例えば1.財務インパクト、財務リスクがあるもの。2.近い将来規制の対象になるもの。3.業界において標準化されてきているものや競争力を持った最先端の実務を促すもの。4.投資家やその他のステークホルダーが関心をもっているものや今あるライセンスやブランド価値を脅かすもの。5.イノベーションや成長を促すもの。を考えてみてください。1.に関しては財務リインパクト、財務リスクを短期、中期、長期のスパンで検討してください。売上、原価、利益率、資産、負債、資本コストなどにインパクトがあれば開示項目として認識することになります。2.に関しては既存の規制だけでなく、近い将来に施行される規制、法律、国際的な合意などが会社にとって大きな課題になる可能性があれば開示項目として認識することになります。3.に関しては同じ業界内の他社のサステナビリティ課題への取組みが業界スタンダードになってきているものや、自社のサステナビリティの取組みによって競争力を生み出しているものを開示項目として認識します。4.に関しては投資家、ステークホルダーが懸念している課題、社会動向など課題を洗い出してください。財務、オペレーションにインパクトのある課題は投資家にとって重要な関心事になりえるので開示項目として認識します。5.に関してはサステナビリティ課題を解決するために開発した新しい商品、サービス、新規に参入したマーケットなど新たな競争力を生み出した取組みは投資家の関心事になりえるので開示項目として認識してください。


この手続きをすることで会社にとって情報開示の対象となりえるサステナビリティ課題のロングリストができると思います。このロングリストが企業の財務状況、業績にどのような影響があるか定性的、定量的に分析することが次の手続きになります。


これまでは非財務情報開示の項目を認識するためにステークホルダーにヒアリングをする手続きをしていたかもしれません。ただ、ステークホルダーへのヒアリングだけに頼ると客観性が欠けてしまうので上記のようなアプローチで客観的にサステナビリティ課題を認識していった方が手続きが網羅的になるかと思います。

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