会計事務所ではパートナーに昇格する前に諸々の個人情報を提出し、コンプライアンス違反のチェックをします。よく問題になるのが独立性違反です。例えば監査先企業の株を所有していると独立性違反です。独立性違反は会計事務所としては非常に大きな問題になるので例外なく厳しくチェックされます。
随分前になりますがコンプライアンス違反より深刻な問題が見つかったことがありました。仕事で絡んだことがある、優秀なシニアマネージャーがある日突然出社しなくなりました。突然出社しなくなる時は殆どのケースが何らかの理由で解雇されたときですが優秀だった彼の解雇の理由が気になり情報収集をしたところ、どうやらパートナー昇進の審査過程で何らかの問題が発見され解雇されたことがわかりました。さらに聞き込みをすると、いわゆるコンプラ違反とかではなく、経歴詐称が理由でした。監査部門の職員のマネージャー以上は公認会計士の資格を有していることが必須です。しかし、驚いたことにそのシニアマネージャーであった彼は会計士資格を持っていなかったのです。ヨーロッパ出身であったので出身国の公認会計士資格があればまだよかったのですが、それも有していませんでした。ヨーロッパにある別の事務所からシニアマネージャーで中途採用されていたことを考えると、恐らく米国に移住するときに経歴詐称に手を染めたと思われます。聞いたところによると彼が提出したライセンスのコピーが不鮮明であったため、原本の提出を求めたところライセンスナンバーなどが偽造されていたことがわかり、経歴詐称が発見されたそうです。クライアントの不正取引、不正会計を発見する業務を行っている会計事務所としては大変お恥ずかしい事件でした。採用時の人事によるバックグランドチェックがザルだったのか、パートナー昇進まで無資格に気づかず、そしてクライアントに無資格のシニアマネージャーを担当させ、報酬を頂いてたことを考えると報酬を全てお返しするぐらいの大失態であったかと思います。クライアントもさることながら、わたしも無資格だったとは知らずに、彼から色々とアドバイス受けていました。経歴詐称などせず、会計事務所以外の場所で能力を発揮していればよかったのに彼がなぜ経歴詐称をしたのか理解できませんでした。採用担当の責任を問われたとは聞かなかったのでこの事件、失態は穏便に処理されたかと思います。どのような再発防止策を打ったのか不明です。
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